『中高年の健康と摂取カロリーに関する常識の再考を迫る本』
メタボ対策やダイエットのための食事制限に、平均寿命の観点から疑問を投げかけ、正しい食事のとり方について説明した本です。
本書は全部で4つの章から構成されています。特に、1,2章で記載されている内容は私にとってインパクトが強く、やや太めの人が最も健康で長生きであることや、現在の日本人の摂取カロリーは終戦直後(昭和21年)レベルにまで落ち込んで寿命の短い発展途上国なみになっていることを示す統計データは、忘れることが無いと思います。著者は、これらのデータに基づき、現在の日本人のカロリー制限は行き過ぎであり、むしろしっかりとカロリーを摂取することが健康上重要であると主張しています。また、後半の3,4章では正しい食事の取り方について、医学的・栄養学的観点から説明しており、実用的に重要な箇所となっています。
寿命・健康・摂取カロリー・体型は複雑に絡み合っており、簡単に論じることは難しいことは素人でも想像がつきます。複雑な問題ですが、推論だけでは無く、BMI値や摂取カロリーと平均寿命を照らしあわせた統計データを基に議論している点に、説得力を感じました。
一方で、本書を通して著者が問題視しているメタボ検診の診断基準(もっとも平均寿命の長いグループが問題視される基準)を決めた側の言い分がほとんど記載されていないため、そちらの言い分は良く分かりませんでした。広く流通している考え方の再考を迫るような内容なだけに、両論を慎重に比較しながらの議論を望みたいところですが、その点が少し残念でした。慎重な議論があれば、著者の説を鵜呑みにしているという感じが無くなり、さらに説得力のある内容になったと思います。