『ゆとりと豊かさ』
イギリスの人たちの「家」への価値観は日本人のそれとは全く異なります。 以前私が住んでいた家は600年前に建てられたものでした。
カビ臭いクモの巣だら家の「House」に手をかけ愛情を注ぎ自分と家族の想いのままの、まさに 「色」を加えていくんです。少しずつ、気長に。。。
そうすると永い眠りについていた家が目を覚まし、語りかけてきます。まさに「House」が「Home」へと変化していくわけです。
それだけのゆとりを持って、楽しみながら「自分たちの家」を創り上げていく精神が日本にはあるのだろうかかと考えさせられます。 残念ながら日本には地震というものがあるので、耐震構造のしっかりした、腕のよい大工さんに作られた家が不可欠です。
でも地震の無いイギリスでは家は自分たちで手を加えていくもの。 不具合が見つかれば自分たちの手で修理、補繕していくのです。 そうやって手間をかけることが苦痛ではなく、楽しみの一つなわけです。
600年前には常識だった家の様式や 間取り、内装に長い歴史で風化されたものを偲び、歴史という壮大なロマンに身を馳せながら 私は自分たちの歴史を刻みつつ、生活をしてきました。
隙間があって寒ければどうすれば快適になるのか。 人は物理的に豊かな暮らしから見放されたときに 内面の豊かさを得るような気がします。「発想の転換」や「工夫」、そして、何事も「楽しむ」ゆとりが生まれてくるのです。
物理的幸福神話から離れられない方には お進めできない本ではあります。 でも、物事を違った角度からみてみたいという人には楽しめるものとなっています。 ただ、コッツウォールズなどは日本でいう白川郷のように観光地化されてしまっていますので、もっと身近で、様々な地域の建物が年代別に紹介されていると より楽しいものになるのではないでしょうか。