『コストパフォーマンスの面でイチ押し』
世界にその名を轟かせる“SHINKANSEN”の礎を築いた名車・0系に、ついに終焉の時が訪れた。
というわけで、“サヨナラ”を惜しみ飾る出版物がいくつか企画発刊されている。本書もそのひとつ。
昨今の世相や嗜好を反映して、DVD付き書籍の形になるのはお約束だろう。
本書は、鉄道はもとより旅行関連書籍を広く手掛ける出版社の強みが遺憾なく発揮された内容と言える。過去から蓄積してきたライブラリデータをかなりひっくり返したに相違ない。
四季折々の風景を彩り、夕陽を浴び、雨や霧を切り裂いて疾走する、ブルー&ホワイトの車体。お立ち台と称される撮影名所から狙い撮りされた美麗写真が全体の半分のボリュームを占め、次々と大パノラマを展開する。0系という車両が、いかに日本という国の当たり前の風景として溶け込んでいたかがよくわかる。
後半も、設計図面や車両諸元表などを駆使して、誕生までの経緯やその後の推移を事細かに記録したページが続き、コアなファンの欲求にも十分応え得るデータブックとなっている。記憶に留め置きたい“10大ニュース”も、選定基準はさておき、エポックメイキングとしては妥当なところ。
同時期に出版された、朝日新聞出版『ありがとう 夢の超特急』と比較しても、美術性、記録性、資料性などの観点から、明らかに優位にある。
ただ、DVDは、2枚組ではあるものの、運転台からの展望映像がメインで変化に乏しく、こちらは『?夢の超特急』のDVDに二歩も三歩も譲る。
しかし、コストパフォーマンス的にも、このボリュームでこの価格はお買い得。出版社が「ファンのために」と相当“勉強”してくれたようだ。
だから、0系ファンとしては非常に嬉しい一冊。他に同類の書籍が出なければ、現時点ではイチ押しのお薦めである。