『デジタル時代の申し子』小雨の降りしきる空は常に灰色の雲に覆われながらも空気は澄み、写真に透明な奥行きを感じさせる。この、湿気のこもった冷ややかな空気を顔に感じられるほどの透明感、視界全体を包む柔らかさはまさにアイルランドだという印象を与えるが、一部の画像は実際の色彩を写したというよりも、イメージに近づけるためにレタッチされたものだそう。だからといって、統一された色彩が魅せるのは偽りでも幻想でもなく、あの、雲が流れ、潮風がゆるやかな丘を吹き揺らす牧歌的なディングルの情景に間違いないのだ。