『サイトの情報でも十分。』
全体的に何故糖質ゼロで良いのかという根拠付けが中心で、そこは読む前からある程度納得していた自分には寧ろ実践面での内容に乏しい感じを受けた。患者例も高齢者ばかりで、20代から40代の場合はどうなのか、また特に女性として気になるホルモンバランスへの影響や、肌等への影響(果物等を断つ事で抗酸化物質の不足はないのか?)など、実際面の疑問は多々残されたままだった。
糖尿病でインシュリン治療等を続けていても効果がない方には現状の打破に有効な手段かもしれないので、星1つは厳しい評価だが、糖尿病を(多分)患ってはおらず、ただ遺伝の関係で不安要素はあり、そこに痩身や健康体の維持といった目的の為に色々と食餌法を模索している自分に取っては、逆に読む前に確信していた糖質ゼロに疑問を持つ形になってしまった。
例えば、あとがきに「この本で皆さんが学んだことは世界で初めてのことばかりです」とあるが、日本はともかく近年の欧米における研究、またダイエットやディトックス方法の動向を追っていれば(アトキンス式を無視したとしても)別に本書の内容は目新しくは感じられない。
唯一他と違うと思ったのは夕食一食のみという所で、ただその点の説明は説得力に欠けていると感じた。私自身、無理矢理朝ご飯を詰め込むのはあんまり健康な気がしないものの、では絶対に朝昼は食べない方が良い、とまでは残念ながら読後に感じられなかった。
また、どうしても甘みが欲しい時にはアスパルテームを薦めている点も微妙である。あとがきに味の素の研究者への謝辞があるので、お世話になったお返しなのか?と疑ってしまう。というのも欧米ではアスパルテームの健康被害がかなり問題視されている事を考えると、「長寿食」とまで称している食事術に人工的に作られた甘味料がラインナップされているのは何だかしっくりこないからである。
更に、実際に食べても良いもの、調理法の話など実践的な話になると、「?ようです」「?報告もあります」「避けた方が無難でしょう」等という記述でどうもピンとこないし、また大量の肉食がガンにつながるというのはデタラメ、として東北大学の研究発表の結論を用いているが、この7行間だけで糖質ゼロ食のメインともいえる肉食を肯定する事に不満(不安)を感じた。
他にも細かい点は幾つかあるが、私にとっては本書の購入はお金の無駄遣いで、内容自体を知りたければ釜池氏のサイトを読むだけで十分だったと思う。高齢者で、ネット環境等がなく、糖尿病で合併症のおそれもあり、インシュリン治療もなかなか効果を上げない、というような方には実際に本を手にして読む価値があると思うが、私のような立場の人は購入を見合わせても特に問題ないと思う。(ちなみにこれは江部康二氏の「主食を抜けば糖尿病は良くなる」も同様だった。)
結局はできるだけ色々な情報を集めて、自分自身で偏りがないように判断できるようになるしかないのだ、と感じた。