『著者の主張をよく聞いてから批判してほしい』
この本の批判をしている人たちは、あら探しをする前に、著者の言いたいことの趣旨をもっとよく読んで汲み取ってほしい。著者は、あらゆる病気が首に原因があると言っているわけではない。うつ、自律神経失調症、更年期障害と見なされている症状の多くは、首の筋肉の硬直によって副交感神経が圧迫されて、働きが悪くなっている点に真因があるのではないかと提言しているのである。現代医学では、首の筋肉の病は盲点になっているという著者の指摘は、当たっているどころではない。
特に自律神経失調症がクセ者である。この病名は著者の言う通り、「医者には原因がわからない」という意味である。レントゲンを撮っても異常がない、生化学検査をやっても異常がない、それなのに患者は不調を訴えてくる。まさか、わからないとは言えない。そこで自律神経失調症という病名を考え出したのである。こうしておけば、患者も治らないのは仕方がないと諦めて来なくなるからである。
著者の主張に弱点があるとすれば、長年蓄積された首の筋肉のコリを解消するのは、鍼・カイロプラクティック・マッサージの熟練施術者のほうが、医師よりむしろ巧みだという点であろう。著者の病院でも工夫した治療を行っているのだろうが、代替医療のほうが伝統的に得意としてきた領域である。現代医学が人体のハードの治療を得意にしてきたとすると、代替医療はソフトの治療を得意にしている。
たしかに著者の業績自慢は鼻につく箇所がある。日本人は特にこうした宣伝を嫌うが、アメリカなら本を出す以上、自己の業績を誇示し宣伝するのは当たり前のことである。どうしても鼻持ちならないというのなら、読み飛ばせばいいだけのことである。とにかく自分の病気が治らないのを、他人のせいにして当たり散らさないこと。