『こころの支えとして、手元に置いておきたい本』
うつの人だけでなくって、誰にでもお薦めできる、誰もが経験する辛い気持に寄り添ってくれる一冊です。
私自身も、今は元気ですが、以前5年半位うつに苦しんでいました。
そういう、辛かった時の自分とシンクロして、
あの時は出なかった涙があふれてきてしまいました。
「死ぬことばかり考えていませんか?」から始まる文章は、
作者の一般的な日本人では境遇し得ない境遇と、その時の心境が吐露されています。
そして、私自身が体感したのと同じような、仕事に関する深い悩みも書かれていました。
私が重度のうつ病だったとき、まるで仕事が手につかない時、よく職場の隣のビルにある書店に走りました。
このどん底の気持ちを救ってくれる本はないだろうか、って。
そして「うつ病」というキーワードで「うつ病の対処法」だとか、「うつはこうして治せ!」
といったタイトルの本に、自分のこころの特効薬はないかと必死になって探しました。
何か、すぐに実践できるアドバイスはないかって。だいたいは、逆にどの本を買っていいのか悩んでしまって、
逆にどんよりしながら職場に戻ったり、あるいは、たまたまよさそうな本を見つけても、
そこに書いてあるアドバイスが効いているのは、せいぜい2,3日でした。
うつの時に必要とされる本、それは、その時の気持ちに寄り添ってくれる本だったって思います。
この本はまさに、その、「寄り添ってくれる」本です。
「うつ」と一言で言っても、その状態は、ベッドから全く起きられず誰とも顔を合わせたくないどん底のときから、
憂うつがちょっと進んだくらいの状態まで、さまざまな段階があるし、それは人によって変わったりします。
この本は、その時の気分、気分に寄り添ってくれます。そして、その時々に支えとなる本を紹介してます。
例えばまったく活字を読めないときは、お薦めの写真集や画集が紹介されています。例えば、その次の段階では、
いかに「はじめの一歩」を踏み出すか、という本が紹介されています。
そしてこの本は、心が病んだ人への様々な気配りがされています。
絵本のような動物のイラストが入った表紙、うつの本でこんなに優しい本は見たことがありません。
心が安らぐ紫のページをめくり、透ける用紙に書かれた本のタイトルと、その用紙の向こうに見えるオレンジがかった雲のフォト。
ここを見ただけで、なぜか泣きたい気持ちになります。そして、特に最初のほうは、それこそこころが寄り添えるフォトがたくさん散りばめられています。
本の前半部分がカラーになっているのも心遣いですね。
そしてこの本は、作者のエッセイと、本の紹介の二本立てであり、それが見事にコラボレートしています。
紹介された100冊の本は、9個の大テーマに分かれています。
そして、それぞれのテーマに関する本の紹介の前に、必ず、そのテーマに関する著者の想いが2ページに渡って書かれています。
この想い、これは辛い思いをした人でないと決して書けないものです。
このエッセイ部分だけを切り取って再度読んでみましたが、これだけで立派なストーリーになっています。
辛い時をどうやって乗り越えたか、それが作者の具体的な過去の経験と共に誰もが共感できる形で書かれています。
この本は、決してうつの人だけでなくて、誰にでも読んでほしい本です。