『有権者の必読書?』
良くも悪くも戦後日本を形作ってきた自民党の歴史をざっと知ると同時に、今後をどの党に託すべきか考えさせられる、なかなかの良著。
自民党を形作る派閥を、構成する政治家達の思想といったものよりも、あくまで政治家個人の人間関係という側面を中心に綺麗にまとめてある。1990年代までの内容に関しては、政治に興味のある人間からすれば、特に目新しさは無い様に感じられるだろう。お陰でつい読み飛ばしてしまいそうにもなる。しかし、読み進めていくうちに、引き込まれていた。
例えば、近年の福田康夫や小沢一郎の理解を得られなかった行動(突然の首相辞任・日銀総裁・大連立構想等々)が、人間関係という側面からみてみると腑に落ちるというくだりは誰しも興味深いのではないだろうかと思う。草野氏が政治家個人の人間関係に着目したことの意味が良くわかる。これだけでも一読の価値はあるのではないだろうか。
また、本書の主題ではないが、報道のあり方や番組検証なども行っている草野氏一流のメディアに着目した分析も興味深い。私自身は民主党も小沢一郎も嫌いだが、自分の主義主張はともかく、戦後ほぼ一貫して自民党が政権与党であり続けている状況の是非について、また来るべき衆院選においてどう投票をするべきなのか、改めて考えさせられた。
ちなみにネットから派閥ごとの所属議員数の変遷や、歴代閣僚の所属派閥等の一覧をダウンロード出来るようになっている。いつだったか忘れたが、小泉政権期の内閣改造後に、悪顔の亀井静香が顔を真っ赤にして小泉を罵っていた姿を克明に覚えているのだが、亀井があれほどまでに怒った理由も、本書と、閣僚一覧を見て理解ができる。もはや過去の人だが今更ながら気の毒になった。